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厚生労働省エイズ動向調査によれば(文献1)、男性同性間の性的接触による未発症HIV感染者(以下、HIV感染者)及びエイズ患者の報告数は1996年以降増加が続き、HIV感染者では2001年から報告数の過半数を男性同性間による感染が占め(図1)、エイズ患者においても増加が続き1/3を占める状況となっている(図2)。
男性同性間の性的接触によるHIV感染者及びエイズ患者の大半は日本国籍例であり、日本国内での感染である。日本国籍HIV感染者について、性・年齢階級別に感染経路内訳を見ると、15-24歳及び25-34歳の年齢層では男性同性間感染の割合は70%を超える状況である(図3)。また、男性同性間のHIV感染者の内、2/3を35歳未満が占めているのに対して、エイズ患者では2/3を35歳以上が占めている。近年では東京に加え大阪、愛知でも著しい増加となり、また福岡等の地方都市部でも増加の兆しにある(図4)。
これらエイズ発生動向の結果は、男性同性間のHIV感染対策が緊要であることを示している。すなわち、
が望まれる。
また、これらの取り組みは東京、大阪、名古屋などの大都市に加え、地方都市においても促進する必要がある。




厚生労働省エイズ対策研究事業による研究班は、東京、大阪、名古屋地域でHIV抗体検査を受検したMSM(Men who have sex with men、男性とセックスをする男性)のHIV抗体陽性割合が2-5%、また梅毒抗体陽性割合が15-20%であることを報告している(図5、文献2-4)。感染症サーベイランス事業や保健所等の梅毒検査では性行動等の情報がとられていないため、MSMで梅毒抗体陽性割合が高いことは見逃されている。MSMにおける梅毒の流行状況をより早い時点で把握し、性感染症防止の啓発普及に取り組むことができていれば、HIV感染の発生もより抑制できたものと考えられる。
エイズ発生動向調査の結果に加え、厚生労働省エイズ対策研究事業による研究班が報告している上記のMSMにおけるHIV/性感染症に関する疫学情報は、男性同性愛者を対象としたHIV/性感染症の予防や治療面での対策が早急な課題となっていることを示している。

1) 社会的背景
わが国に限ったことではないが、男性同性愛者の人口は明らかにされていない。このことは、男性同性愛者を対象とする保健事業を企画する場合に、予算の根拠となる人口が把握できないという問題を生じる。また、男性同性愛者を対象とする保健事業を、地域や職場の健診事業のように健診会場を周知し一同に集めて実施することはプライバシー等の面で不可能である。さらに、男性同性愛者の若年層を対象とした性教育やエイズ啓発教育は、現在の教育環境では取り上げられることが困難な状況にある。
同性愛者は、自身の性的指向(セクシュアル・オリエンテーション)が同性であることを自認している人で、男性同性愛者をゲイ、女性同性愛者をレズビアンと呼称することが多い。なお、バイセクシュアルは同性、異性の両者に性的指向を有している場合を言う。一般メディアや社会の中で使用される「オカマ」「ホモ」「レズ」などの表現は差別的な意味で使われることが多く、同性愛者に対しては適切な表現ではない。セクシュアル・マイノリティ(少数者)に対する社会の偏見と差別は、同性愛者が同性愛者として生活権を顕示することを困難にしており、同性愛者の存在を不可視化しているといえる。
1999年、木原らは18-59歳の日本人5000人を対象に性行動等に関する全国調査を実施し、同性に性行為や性的興奮を有する割合は男性では1.2%、女性では2.0%であったと報告している(文献5)。この数値をもとに男性同性愛者を推定すると、18-59歳ではおよそ50万人となる。しかし、この調査は面前自記式調査であったため回答拒否なども推測され、実際はこの数値の数倍と考えられる(3-5%として150-210万人)。また、人口集積が大きい都市部においては、同性愛者人口も多いと考えられ、このことは同性愛者が利用する商業施設等が都市部に多く存在していることからも伺える(図6)。
男性同性愛者を対象にした調査によれば、「ホモ、おかま」といった言葉によるいじめ被害の経験を有するという回答率は65.6%と高く、その一方で自身の性的指向を親にカミングアウトしていたのは17.6%と少ないことが示されている(文献6)。このことは自身の性的指向を明らかにして社会生活(職場、学校、家庭などでの生活)をおくることは、男性同性愛者にとって必ずしも容易なことではないことを示唆している。
ゲイ・コミュニティという言葉は、男性同性愛者の生活共同体(地域)が存在するかのような連想を起こさせるが、わが国にはそのような意味でのゲイ・コミュニティは見当たらない。男性同性愛者同士が集い、語らう場としては、バー、クラブなどの商業施設、あるいはサークルやインターネットなどが利用されている。これらの場を通じて情報交換や交流が行われていることから、私たちはこれらの場をゲイ・コミュニティととらえている。
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